太陽の船プロジェクトの現場から

私は今、エジプト・ギザの太陽の船プロジェクトの現場にいます。去年の4月、新型コロナウィルスの流行のため日本に帰って以来、8カ月ぶりに現場に戻りました。私がいない間、エジプトでは5月から7月にかけて感染が広がり、夜間外出禁止令や学校の閉鎖などの措置がとられました。その後いったん流行はおさまりましたが、12月下旬から1月上旬にかけて再び感染のピークを迎えたところです。

しかし太陽の船プロジェクトの現場はこの間も一度も閉じることはなく、エジプトに住んでいるスタッフが、出来る限りの仕事をし続けてきました。彼らは意気軒高です。エジプト人は普段はマスクが大嫌いなのですがスタッフは毎日ちゃんとマスクをつけ、今までしたことのない手足や施設の消毒をせっせとし、現場の楽しみの一つだった昼食やイスラームの集団礼拝も、人が集まるからという理由でなしにしました。そのように十分に注意を払ったおかげで、私たちの現場で感染をしたという人は、今までのところ出ていません。

現場ではピットから取り上げた部材を保存修復する仕事、保存修復を終えた部材を大エジプト博物館保存修復センターへ運ぶ搬送の仕事を続けてきました。そのほかにも模型を作って船の組み立て復原のシミュレーションをしたり、部材の三次元計測を続けるなどの研究、調査もしています。

また、現場に建てた保存修復場の建物の一部を解体する作業も始めました。船坑の中に収められていた船の部材はほぼ取り上げを終えましたが、最後に船坑の中をクリーニングしたあと、現場にある建物をすべて、船の組み立て復原を行う大エジプト博物館に移動する予定でいます。大エジプト博物館では今、クフ王の2隻の船を公開するための専用の展示館が建設中なのですが、私たちが移動する建物は、第2の船の組み立て復原を準備する作業場となるのです。

今年に入ってもまだ、新型コロナウィルスのエジプトでの流行は止まっていません。でも私たちはできる限りきちんとした対策を立て、今後は日本からのスタッフも交え、プロジェクトを進めていくつもりです。ご注目をいただきたく、よろしくお願いいたします。

このプロジェクトは(独)国際協力機構(JICA)の支援をいただき、吉村作治(東日本国際大学学長)代表のもと、東日本国際大学エジプト考古学研究所、NPO法人太陽の船復原研究所、エジプト政府観光考古省、大エジプト博物館保存修復センターが共同で行っています。

現在の現場の様子
船坑とスタッフたち
大エジプト博物館保存修復センターの収蔵庫に部材を搬送
模型を作って組み立て復原のシミュレーション
レーザースキャナーを使って部材の三次元計測
建設が進む大エジプト博物館